必読! 仙台市議会は、選択的夫婦別姓を、どう論議したか。

            1998年6月10日 仙台市議会議事録より  日程第6 平成9年第一号請願及び平成9年第二号請願 ○議長(菅原敏秋)日程第6 平成9年第一号請願及び平成9年第二号請願、以上二件を          一括審議といたします。   委員長の報告を求めます。   市民教育委員長 佐藤正昭君。      〔五番 佐藤正昭登壇〕 ○五番(佐藤正昭)平成9年第一回定例会において、市民教育委員会に付託を受けました  平成9年第一号請願選択的夫婦別姓等の民法改正に関する件及び平成9年第二号請願夫  婦別姓制導入反対に関する意見書提出を求める件につきましては、これまでそれぞれの  請願者あるいは学識経験者を参考人としてお招きをし、御意見をお聞きするなどしなが  ら慎重に審査を行ってまいりましたが、去る5月21日開催の委員会におきまして起立  採決の結果、お手元に差し上げました審査報告書のとおり、いずれも不採択とすべきも  のと決定をいたしましたので、御報告申し上げます。 ○議長(菅原敏秋)これより委員長報告に対する質疑に入ります。質疑はありませんか。     〔「なし」と叫ぶ者あり〕 ○議長(菅原敏秋)質疑なしと認めます。  これより討論に入ります。  まず、平成9年第一号請願について、辻隆一君から通告がありますので、発言を許しま  す。辻隆一君。     〔20番 辻隆一登壇〕(拍手) ○20番(辻隆一)社民党市議団の辻隆一でございます。  昨年2月25日に本会議に提出されてました第一号請願選択的夫婦別姓等の民法改正に  関する件は、先ほど報告がありましたとおり、賛成者少数により不採択となりました。  この委員会報告をめぐる本会議での採択を前に、私は委員長報告に反対の立場から討議  を行うものであります。   この選択的夫婦別姓制度は、多くの国民の意見を踏まえて、1991年法制審議会が  5年余をかけて審議を開始し、結果として一昨年の96年2月に、その制度の導入等を  内容とする民法改姓案の要綱を答申したことで、具体的な論議が進められてきたもので  あります。   この選択的夫婦別姓制度は、夫婦同姓だけでなく、別姓も選べるようにする制度であ  ります。現在の民法の規定では、婚姻を提出する際、夫の姓、妻の姓のどちらか一方を  夫婦の姓として選ぶことができるようになっておりますが、この選択的という制度は、  この二つの選択肢に加えてそれぞれの姓という第三の選択肢を設けるものであります。  価値観が多様化し、同姓のみを強制するのではなく、どちらかを選択できるということ  は、極めて今日的な、そして豊かさを保障する制度とも言えるものであります。   94年9月に朝日新聞が行った調査によれば、法改正をして夫婦別姓を選択できるよ  うにすることに対して、賛成が54%、反対が34%となっております。労働組合の連  合がこの春、民間企業を対象に行った調査でも、三割以上が既に別姓制度を導入してい  ることが明らかとなっております。このように、民間企業が先行して時代の趨勢に合致  した制度を導入しているのであります。自治体を初め、公営部門でのおくれこそが指摘  されるのは当然であります。   これまで国会では審議が進んでこなかったという事実はありますが、今議員立法とし  て、時期国会にも提出されるという動きも出されてきている状況であります。当市議会  には、この制度導入に反対する請願も提出され、これも不採択となったわけであります  が、残念ながら、この請願の趣旨が家族制度に結婚生活を閉じこめるかの見解であり、  この別姓制度が選択的であるということを捨象して、制度導入によって家族が崩壊する  かのような意見から反対するというものでありました。   私は、この意見は時代の流れに逆行するものであり、否決は当然のことと受けとめる  ものであります。そもそも、望ましい夫婦像や親子像が一つしかないという考えは、家  族が多様化し、価値観も多元化している現代ではそぐわないものであります。同姓以外  の例外を一切認めないとする方が、国際化やグローバル化の時代に逆行するものではな  いでしょうか。   本仙台市でも、男女共同参画型の社会を目指して行動計画を策定して進めているとこ  ろであります。まさに、こういう男女の差別なく共同でつくる社会を目指すという立場  から、この選択的夫婦別姓制度の持つ意義は、極めて深いものであります。この問題を  一つの契機として、大いに議論を巻き起こすということも大切なことだと考えるもので  あります。   本市議会議員各位のこの問題に対する深い御理解と御協力をお願い申し上げ、私の討  論を終わります。   御静聴ありがとうございました。(拍手) ○議長(菅原敏秋)次に、平成9年第一号請願について、洞口邦子君から通告があります ので、発言を許します。洞口邦子君。     〔26番 洞口邦子登壇〕(拍手) ○26番(洞口邦子)私は日本共産党仙台市会議員団を代表して、第一号請願選択的夫婦  別姓等の民法改正に関する件を否決した委員会報告に反対し、選択的夫婦別姓を推進す  る立場から討議を行います。   今、多くの女性たちが一人の人間として人格と個性が輝く生き方をしたいと願い、そ  れを妨げる障害を取り除いて真の男女平等と子供の権利を確保しようと求め始めていま  す。女性の社会進出が進む中で、結婚による姓の変更が働く女性に不利益を与えており  、また姓を変えることが自分らしさを失うと感じて、結婚しても旧姓を名乗れるように  してほしいというのもその一つです。憲法24条が、結婚を個人の尊厳と両性の本質的  平等の上に成り立つことを保障していることからも、こうした夫婦別姓を選択できるよ  うにしてほしいとの要求は正当なものであり、今日、日本の社会の中に別姓を望む人に  選択の自由を与えてもよいという合意が形成されてきています。   こうした中で、一昨年2月、政府の法制審議会は、選択的夫婦別姓制度などを答申し  ましたが、これは大筋賛成できる内容となっています。日本共産党は、既に1987年  から、希望すれば別姓を名乗ることができるように、民法改正を政府に求めてきました  が、多くの女性団体を初め、国民の多くが納得できる範囲での改正を速やかに表現する  ことが大切であると考え、昨年10月に民法改正案大綱を発表し、国会内においても各  党間で合意できるよう全力を尽くしてきました。   一昨年、党派を越えての一致点が実を結び、選択的夫婦別姓制度を柱とする民法の一  部を改正する法律案が衆議院に提出されました。衆院五会派などの超党派議員116人  が賛同者で、名前掲載のできない議員を含めると、実際の賛同者はもっと多く、議員立  法として出されたことは画期的なものがあります。明治憲法では、女性が法律上、無権  利で無能力者扱いされてきました、新憲法施行から半世紀を経て、夫婦の姓の問題で、  実質的男女平等を図る法案が提出された意義は非常に大きいものがあります。   こうした国会での動きを前にして、仙台市議会で、選択的夫婦別姓等の民法改正の早  期実現を求める意見書を国会に提出してほしいという趣旨の請願が否決されたことは、  高まりつつある世論に逆行するものであり、断じて認めることはできません。   自分自身の経験に照らしても、民法改正は待ったなしの課題です。私は議員に当選し  て間もなく結婚し、戸籍上は夫の姓に変わりました。しかし、議員として市民から寄せ  ていただいた期待と信頼を保持しながら、有権者から選ばれた洞口という姓を継続して  使うことが望ましいと考え、対外的には旧姓を通称として使っています。   当市議会では、幸い通称使用が認められ、そのことで社会的には何一つ不利益をこう  むったことはなく、誇りを持って旧姓を使い続けていますが、公民を問わず職場の中で  通称使用が認められているところはまだ少なく、どれだけ多くの女性が不自由な思いで  働いているか、はかり知れないものがあります。   私も、個人的には幾つか不自由な思いをしてきました。それまで使っていた印鑑証明  書が使用不能となって送り返されてきたときは、三十数年間生きてきた自分の人生が丸  ごと否定されたようなむなしい思いでした。また、不在の際の郵便物を受け取りに行っ  ても、保険証も免許証も本名なので、通称で郵送されてくる郵便物に対して証明するも  のが何もないなど、数えればきりがありません。こうした体験をするたびに、民法改正  の早期実現への思いは募る一方でした。   選択的夫婦別姓を認めるべきでないという人たちの主張として、夫婦別姓を認めたら  家族の一体感がなくなって、家族の解体につながるというのが主な理由となっています  。そうした心配は、家族内離婚とか家庭崩壊という言葉に象徴される日本の家族が抱え  ているさまざまな問題があるからかもしれません。   しかし、諸外国を見ても、ほとんどの国で別姓、同姓の選択を認める制度になってい  ますが、特にそのことが原因で社会秩序が乱れているということはありません。家族の  一体感やきずなとは、夫婦、家族の愛情と信頼を基礎に一人一人の人格や人権が尊重さ  れる人間関係を築いていく中でこそ、強まっていくものではないでしょうか。同姓なら  それが可能で、別姓では解体してしまうという性質の問題ではありません。夫婦別姓を  認めても、それで日本の社会が大きく揺らぐ心配などなく、夫婦別姓に反対する理由は  、どれも誤解や偏見が生んだ思い過ごしや取り越し苦労にすぎません。夫婦同姓を強要  している国はわずか三カ国という状況のもと、別姓を認めることは今世界の流れです。   今回の民法改正の要点は、選択の幅を広げようということです。民法改正の実現は、  日本の民主主義の新たな前進の一歩となるものであり、日本共産党は、真の男女平等と  子供の平等の前進を願う国民の皆さんと一緒に、改正案の成立のために全力を尽くしま  す。   当市議会においては、民主的な議会であることを国に示していく上でも、この請願を  否決した委員長報告に対し、会派を超えて多数の議員の皆さんが反対されることを強く  求めるものです。その上で、この請願を採択して民法改正の実現を求める仙台市議会の  意思を全国に向けてきっぱりと示していくよう求め、私の討論といたします。(拍手) ○議長(菅原敏秋)これにて討論を終結いたします。  これより採決に入ります。  平成九年第一号請願 選択的夫婦別姓等の民法改正に関する件 を採決いたします。  委員長報告は、不採択であります。本請願は、委員長報告のとおり決することに賛成の 諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕 ○議長(菅原敏秋)起立者多数であります。よって、本案は、不採択と決しました。 ○52番(山脇武治)議長、意義あり。 ○議長(菅原敏秋)山脇君。 ○52番(山脇武治)現在、議長は賛成多数と宣しましたが、私はそれに異議を申し立て ます。したがって、採決を投票でやり直してください。 ○議長(菅原敏秋)山脇議員、私は多数というように判断したんですけれども、起立をや りましたから。それでは、起立者の数を明確に数えますか。それでよろしいんじゃないで すか。 ○52番(山脇武治)やってください。 ○議長(菅原敏秋)多数と判断をしましたから。 ○52番(山脇武治)いや。異議があった場合の手続きが決まっているわけですよ、会議 規則で。 ○議長(菅原敏秋)採決で決定をいたしましたからね。その後のことですから。 ○52番(山脇武治)いや、違う。 ○議長(菅原敏秋)それでは、正式に数を数えさせていただきますので、大変ご迷惑です けれども、もう一度賛成の方の起立をお願い申し上げます。  委員長報告のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕 ○議長(菅原敏秋)数を数えてください。きちっと数えてくださいね。正確に数えますの で、大変申しわけございません。     〔事務局職員、起立者数を確認〕 ○議長(菅原敏秋)出席議員62名中、36名の賛成でありますので、起立多数でありま す。よって本請願は、不採択としました。  次に、  平成九年第二号請願 夫婦別姓制導入反対に関する意見書提出を求める件 を採決いたします。  委員長報告は、不採択であります。本請願は、委員長報告のとおり決することに賛成の 諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕 ○議長(菅原敏秋)数えてください。起立者を数えておりますので、そのまま起立をお願 いします。     〔事務局職員、起立者数を確認〕 ○議長(菅原敏秋)出席議員62名中、不採択に賛成の議員36名、よって、本請願は、 不採択と決しました。 ○45番(佐々木両道)議長、議事進行。 ○議長(菅原敏秋)佐々木議員。 ○45番(佐々木両道)ただいま本会議において、第一号請願と第二号請願、この両方と も、議長のもとにおいて採決をいたしたわけでございます。  もとより、私ども議員といたしまして、本会議における意思確認ということが、私ども の最大の権利であると私は理解しているものでございます。  この第一号請願と第二号請願、皆様方既に御存じのとおり、全く相反するものでござい ます。この請願につきまして、両方に立つ、それから両方に座っておくということは、大 変ゆゆしき問題であると思うわけでございます。この両方に対して態度を決定できない方 は、退席をすべきものが当然な権利行使というふうに思うわけでございます。  そんな意味におきまして、総数よりオーバーということは大変おかしいことでございま す。そういう面におきまして、やはり本会議におきまして、63名の人間に対して両方と も反対ということは63名以上の人間がいるというふうになるわけでございます。この請 願の趣旨に内容について、賛成反対を問うているわけでございます。そういう面で意思確 認というものは、私は議長のもとにおいてやるべきであるというふうに考えるものでござ います。  そんな面におきまして、休憩でもとっていただき、真意を確かめ、退席していただく方 は退席していただくというふうなことが、私は当たり前の権利であると思うわけでござい ます。  そういう意味においで、総数以上の票というものはいかなるものか、これを議長におい てお裁き願いたいと思います。 ○41番(岡征男)議長、議事進行。 ○議長(菅原敏秋)岡議員。 ○41番(岡征男)ただいまの議事進行に関しまして、私は全く反対の意見と申しますか 、議事進行を申し上げたいと思います。  個人の、一人の議員としての発言あるいは考えは結構でありますけれども、議長が今進 めてまいりました議事運営上の進行については、私は何ら誤りはない。一号請願、二号請 願、それぞれの立場で、それぞれの考えで、そして議員個人個人がその判断のもとで行っ たものであります。何ら議事進行上の手落ちはありませんし、ましてや、この本会議で決 定を見たわけでありますから、それについての議事進行は到底認めがたい、この旨をお話 申し上げたいと思います。 ○議長(菅原敏秋)本請願は、両方とも委員長報告のとおり不採択と決定いたしました。  佐々木議員よりいただきました議事進行は、私も後ほど考えさせていただきまして、先 に進ませていただきたいと思いますので、御了解をいただきたいと思います。 ○45番(佐々木両道)議長、議事進行。 ○議長(菅原敏秋)佐々木議員。 ○45番(佐々木両道)ただいまの議長の返答どおりでよろしいと考えますが、一言申し 上げたいと思います。  議事進行上のいわゆる議決の問題に関して、私は課題としてやっているのでございまし て、このたんたんとした議会の運営上の問題ではございません。いわゆる採決の仕方が大 変繙この両方に賛成、反対、要するに、相反する課題のものに対しまして、総数以上 のオーバーがあっていいのかどうかというものを議会全体としてとらえて、議長として今 後のために御整理を願いたいと思います。  これは、御返答は先ほど議長からいただいておりますので、そのとおりひとるよろしく お願いを申し上げたいと思います。

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